人気ブログランキング | 話題のタグを見る
安部公房『友達』
安部公房『友達』_f0046622_22234938.jpgシアタートラムで、安部公房作『友達』という芝居を観た。
この劇場は、東京に残る二ヶ所のチンチン電車のひとつ、世田谷線の終点「三軒茶屋」駅のホームすぐ隣にあって、客席200のこじんまりとしてはいるが、近代的な劇場だ。
三軒茶屋は、ビルや首都高速、国道246号と、昔の闇市のようなごちゃごちゃした周りの商店街とが、妙にマッチした、世田谷の下町のような不思議な街だ。

昔、近くに住んでた友達と、ここの天ぷら屋でよく一杯やったなぁ。
「息子は今、”なだ万”で修行してるのよ~」
と嬉しそうに自慢していた、愛想のいいおデブなおばちゃんが、しばらく行かないうちに、亡くなってしまってた時はショックだったなぁ。
でも今は、おじさんとその息子、お嫁さんが立派に切り盛りしている。
天ぷらはもちろん、ここの、あん肝となまこは最高!
誰が作ったかは知らないが、ここのHP、華美に走らず、簡潔にまとまってわかりやすく、温かみがある。まさにお店の雰囲気そのものだ。

安部公房はたしか昔、教科書だか教材だかに載っていた。
読んだときに何か引っかかるものがあった。
それがずっと気になっていて、観てみようという気になった。



安部公房『友達』_f0046622_22241097.jpgある晩、一人暮らしの男のアパートに、突然見知らぬ家族9人が訪れる。
むりやり上がり込んだ家族は、
「一人ぼっちはいけない、孤独はよくない」と言いながら、「隣人愛」を押し付け居座るようになる。
そんなものはいらないと、男は自由を主張するが、婚約者をその家族にそそのかされ失ってしまう。
男は、家族の中の若い女に一緒に逃げようと持ちかけるが、家族の平和を乱したことで、檻の中に押し込められ、最後には若い女に毒を飲まされて殺されてしまう。という不条理劇だ。

若い女が男を殺した後で言う。
「逆らいさえしなければ、私たちなんか、ただの世間にしか過ぎなかったのに」。
世間、普通、多数派・・・これらは、もはやその存在自体が暴力になり得ることを、そこに住む人々は知らない。というよりそんなところまで考えが及ぶわけがない。
勝手に人ん家に上がり込んどいて、「逆らいさえしなければ・・・」なんて、盗人猛々しいにもほどがある。
手前勝手な理由で攻め込んで、おためごかしなことを言いながら、正義の味方を装って暴力をふるう、どっかの国とおんなじだ。全くタチが悪いぞ。

この戯曲を三島由紀夫は、
「連帯の思想が孤独の思想を駆逐し、まったくの親切気からこれを殺してしまう物語」と絶賛したらしい。
どこかのサイトにあったので、もっともらしく書いておく。

親切ほど厄介なものはない。
天ぷら屋で修行でもしてこいっつーの。
by adukot_u3 | 2008-11-23 22:24 | 演劇・演芸
<< ご予約が確認出来ません 拉致現場 >>