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『浪曲』を憂う
浪曲好きの友人に誘われて浅草に浪曲を聴きに行った。
外国人観光客や修学旅行生で賑わう仲見世通りや浅草寺界隈とは趣を異にするそこは、いかにも場末の風情。

近所の洋品店では、鮮やかな紫色のダブルのスーツや、黒地にラメ入りのブルゾン&スラックス、誰が買うんだか、豪華客船の船長の制服みたいなのがつるしで売ってたりする。
なんとなく異空間に迷い込んだようで怖い気もするが、なぜか心惹かれる不思議ワールドだ。

関係ないけど、コワモテな職業の方々は、カジュアルになるとどうしてあの胸元に、耳の垂れた可愛いんだか可愛くないんだか良くわからないでっかい犬が描いてある派手なセーターを着るんだろう?
おばちゃんたちはどうして胸元に、目がエメラルドみたいなヒョウを飼うんだろう?謎だ。

劇場内は、田舎の映画館のにおいがした。
20人ほどのスカスカの客席。薄い緞帳幕。隣の大衆演劇館から、かすかに洩れる演歌のBGMが、始まる前から哀しい気持ちにさせる。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
しょっぱなの前座からもはや、涙を流しての大熱演だ。
と言いたいところだが、スカスカの客席に不釣り合いな熱演は、やはりどこか哀しいのだった。
最近TVでよく見かける人気浪曲師、国本武春でさえ、心なしか精彩を欠いて見えた。



一番ビックリしたのは、出て来た時から「…だいじょぶなのか?」と心配になるような、かなり高齢のおじいちゃん浪曲師。
なんと途中で忘れること数回。思い出すまでに微妙な間が空いて、その間、曲師と呼ばれる脇の三味線のヒトは
ベベベ〜ン「アッ」ベベベ〜ン「オッ」ベベベ〜ン「ハァ」
ベベベ〜ン と、意味のない合いの手を入れ続ける。

最初は観客にわからないように、三味線に紛れてなんとか教えようとしていた曲師も、一向に伝わらないことに開き直ったのか、仕方なく歌の出だしチックな怪しいバレバレ合いの手を入れていた。 これにはかなり笑った。優しい観客達はあからさまには笑わないけど…。
スゴいのは、このおじいちゃん浪曲師、忘れるならまだしも、同じところを繰り返しちゃったりもする。あれ?そのタンカ、さっきも聞いたよ。みたいな。

忘れたり繰り返したり…。滑舌がイマイチなこととも相まって、ストーリーがだんだんわからなくなってくる。
さすがに「おいおい、それはちょっと・・・」と思ったが、それは曲師の方も同じだったようで、つい立てに隠れてはいるものの、
「あれ?ムカついてる?」って雰囲気が伝わってきて、これまた笑えた。

まぁ、そんなアクシデントはあったものの、皆さんのありがたい熱演のお陰で浪曲の面白さと、なによりもその難しさが良くわかった。
ストーリーを語りつつ、ある時は台詞仕立てで一人何役をもこなし、ここぞという時には、うなり節で盛り上げる。そう、講談と落語と民謡を一緒にやっちゃうみたいな感じだ。
ひとりミュージカルスターと言ったら言い過ぎか?言い過ぎだな(^^;)
元々こういう系統が嫌いではないわたしとしては、浪曲特有のあの声と節回しが結構好きだったりするが、今の若者達がそうなる確率はたぶんかなり低い。
と言うか、ない。かもなぁ…。
by adukot_u3 | 2005-10-07 02:55 | 演劇・演芸
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