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さくらんぼ
ちょっと前に、やっとこさ引越し葉書を出した。
こんな大規模な引越しをしたのに、引越し葉書が年賀状じゃ、いくらなんでもまずかろうと思ったからだ。

さくらんぼ_f0046622_23475131.jpgしばらくして、すばらしく大粒なさくらんぼがぎっしり詰まった箱が送られてきた。
たぶん、こんなに立派なさくらんぼは一生お目にかかることはないだろうと、母とがっついて食べた。
佐藤錦なんて間近で見たことないから知らないけど、どう考えてもあれは最高級の佐藤錦に違いない。

差出人を見て驚いた。
15年以上も前に勤めていた新宿のとある会社の総務にいた女の子だった。
飲み歩くのが好きだったわたしは、ちょうどひとまわり下の彼女ともよく飲みに行った。
その後、社内でも人気者だった彼女は、当時つきあっていた東北出身の彼の元に若くして嫁いだ。

都会生まれ育ちの彼女が、そんな田舎でやっていけるわけないから、きっとすぐに戻ってくるだろうと思っていたら、順調に子供が生まれ、今では立派な3人の子供のお母さんとなっている。
それ以来、年賀状のやりとりだけのつきあいだったが、なんだか懐かしくなって、さくらんぼのお礼も兼ねて嫁ぎ先に恐る恐る電話をしてみた。

声を聴いてぶっとんだ。
あの、都会っ子だった彼女が、すっかり東北弁になっていたからだ。
嫁いだからにはそこの土地に馴染むのが彼女にとっては一番幸せなことなのはわかってはいるが、急に彼女が遠い人になってしまったようで、ちょっと淋しくなった。

彼女が東京を去ってからも、わたしはジタバタしながらなんとか頑張っていたが、その間彼女は、東北の田舎で、舅や姑に囲まれた大家族で、必死に馴染もうとしていたかと思うと、なんだか切なくなった。
さくらんぼは、わたしの引越し便りを見て急に懐かしくなって送ってくれたらしいが、何百キロも離れた、係累の全くいないところで自分の居場所をつくるということは大変なことだ。

3人の子供たちに囲まれ、東北弁にすっかり馴染んだからと言って大変じゃなくなるわけじゃないし、時折ふと、心にすきま風が吹くこともあるだろう。
「もっと実家に近いところに嫁に行けばよかった」。
数年前、はじめて出席した地元の同窓会で、高知県の遠いところに嫁いだ友達が言っていた。

京都生まれのウチのばぁちゃんも、ときおり、タバコを吸いながら岸壁から海を見てたそがれることがあったが、あれはもしかして、自分の来し方を思いかえしていたのだろうか。

なんとなく、遠いところに行く人は遠いところに行くDNAを持っているような気がする。
そして、たぶんわたしはそんなDNAを持った人が好きなんだろうと思う。
by adukot_u3 | 2013-08-13 23:47 | 日々雑感
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