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『日本が自滅する日―「官制経済体制」が国民のお金を食い尽くす! 』/石井紘基

日本は戦後ずっと、経済を第一に成長してきた。
生きて行くことが綺麗ごとでは済まないように、日本という国をなるべく早く戦後から復興させるためには仕方なかったのかなぁと政治に疎いわたしは思っていた。
しかし、そんな美味しいとこ取りな生き方には、やはり大きな落とし穴があった。

かつて民主党に石井紘基(いしい・こうき)という国会議員がいた。
崩壊前のモスクワ国立大学に留学していた彼は、そのときすでにソ連が崩壊することを感じ取っていたという。
その後、日本で政治家として活動し始め、日本の構造が崩壊前のソ連とそっくりなことに危機感を感じるようになる。

国の予算には「一般会計」と「特別会計」がある。
メディアでは「一般会計」のことしか言わないが、それは建前上の予算であって、実は「一般会計」の4倍にもなる「特別会計」が国会を素通りしている。
この「特別会計」を通じて、官僚の天下り先として作られた特殊法人や数千にも及ぶ公益法人、認可法人、ファミリー企業、公営企業、公共工事に、わたしたちの税金が「財政投融資」という名前でジャブジャブ使われている。
まるで国を相手にした振り込め詐欺だ。
見返りには天下り受け入れや、族議員への政治献金。(自民党の個人献金額の7割以上が電力9社の役員・OB
昔、塩ジイが言ったようにもはや税金は、「離れですき焼きを食べている」ような人の周りしかぐるぐる回らないようなしくみになってしまってるのだ。

わたしは日本を自由経済の国だとずっと思っていた。
でもどうやらそれは大きな間違いだったらしい。
実際には政官一体の官製計画経済であり、崩壊したソ連と国のしくみは何ら変わらないというのだ。
経済にも疎いわたしは、今までどうしてこうも経済がよくならないのか誰の話を聞いてもわからなかったが、この本を読んで長年の謎が解けた。

今のしくみのままでする公共事業は、単にそこに群がるレギュラーな人たちを潤すだけで、全体の景気が良くなるわけでも雇用が増えるわけでもない。
それに、市場経済じゃないところに市場経済に基づいた小手先の経済政策をしても効果がないのは当然のことだ。
今、選挙前で、政治主導とか脱官僚とか勇ましい言葉を並べている人がいっぱいいるが、特殊法人に触れずしてそれを言うのは自分がその一員か、もしくはまやかしだということもわかった。

ぼんやりニュースを見ていると、郵政や道路公団を民営化すれば効率がよくなって、なんとなく解決するような気がしてしまうが、これも違うらしい。
ただ民営化するだけなら、単に利権が転がり込む民間会社ができるだけ。
税金に巣食う寄生虫を取り除き、税金が一部を還流するだけの「しくみ」を変えない限り、日本はソ連と同じ道を辿ると石井氏は警告している。

『日本が自滅する日―「官制経済体制」が国民のお金を食い尽くす! 』/石井紘基_f0046622_1432847.jpg棚田の下にある田んぼに水が行き渡らないのは、上の方にあるやたらにデカい田んぼが、川からの水の量が増えようが減ろうがおかまいなく、いつも満々と水を湛えているせいだった。
要はその、やたらにでかい田んぼをなくさないと、未来永劫、水は下には下りてこないということだ。

よくよく考えてみると、毎年、予算のときはあんなにスッタモンダするのに、それらがその後どうなったかという決算については全く触れられないのはなんでだろう?
こんなの普通の企業では考えられないことだ。
まぁ、予算さえブン取ればその年はそれを使い切ることに専念すればいいというしくみ自体もどうかしてるが、こんな組織が効率よく何かをやれるわけがない。
メディアが決算について触れないのは、あまりにめちゃくちゃだから?
だとしたら、かつてのソ連がそうだったように、この国の真実の姿は鉄のカーテンの向こう側にしかないということか。
戦後、経済だけに邁進してきた代償とは、国民の血税に官僚や族議員が血眼になって群がり、ジャーナリズムまでがそれに加担し、原発事故が起こってもなお推進しようとするような、病んだ国になることだったのかと愕然とする。

日本という国を本気で憂えていた石井氏は、志半ばで右翼と称する男に刺殺された。
亡くなった後、遺志を受け継ぐと民主党は言っていたのに、議員会館にあった膨大な資料の入ったダンボールは、ほとんど手つかずのまま遺族の元に返された。
民主党は、特殊法人に本気で取り組む気なんて元々なかったのだ。

今、その誰も手をつけられなかった、あまりに美味し過ぎる利権をアメリカがTPPで狙っている。
このことを肌で感じている石井氏のような国会議員は果たしてどれぐらいいるだろう。


【日本が自滅する日 目次】
by adukot_u3 | 2012-12-04 23:29 | 書籍
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