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書籍『戦後史の正体』

外務省国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授を歴任した孫崎享(まごさき・うける)氏によって書かれた『戦後史の正体』。
すいぶん前に読み終わっていたが、内容があまりにすご過ぎるのと、学校で勉強した日本の近代史はいったいなんだったんだろう?と激しく脱力して、しばらくは感想なんて書く気になれなかった。

戦後、GHQと渡り合って国益を守ったのは吉田茂氏ということになっている。
わたしたちが常識だと思っている日本の戦後史は、まずここから根本的に間違っている。
ちょっと前にNHKで『負けて、勝つ~戦後を創った男・吉田茂~』というドラマをやっていたが、こういうのも間違い。
「公用語を英語にしろ、通貨をドルにしろ、裁判権はアメリカが持つ」と言ってきたアメリカ側に対してそれを叩き返したのは、あんまり知られてないが外務大臣の重光葵(しげみつ・まもる)氏だ。
その後、吉田茂氏によって日米安全保障条約が締結されるが、その調印式の場所がなんと、国立公園の下士官用クラブハウスの一室で、しかも署名したのは吉田氏ひとり。
仮にも日米の国際条約が、そんなところでひっそりと調印されるものだろうか?と思うが、されるものなのだ。

敗戦から復興するためには、最初のうちはアメリカに面従腹背も仕方ないという意見もある。
しかし吉田氏は、復興した後も自主路線への変更を選択しなかった。
GHQと渡り合う気骨ある男とされていた人は、実は最も対米従属な首相だったのだ。
第5次まで続いた吉田内閣がそれを証明している。

このように、この本を読むと、今まで当然だと思っていた歴史に対する思い込みや常識がことごとく破壊される。
特に歴代首相に対して「この人は悪そうでどうも好きじゃないなぁ」とか「この人はクリーンだからいいなぁ」などと、なんとなく思っていたイメージは、たぶん180度変わる。
この本の見解が100%正しいわけではないかも知れないが、ちゃんとした外務省の公用文書が証拠なので大きく外れていることはたぶんないだろう。
なにより、ここに書かれていることを踏まえて日本の戦後史を眺めてみると、あまりにピタリと合致することが多くてそうとしか思えないことだらけなのだ。

岸信介氏がA級戦犯から首相にまでなって新安保条約に署名するに至った理由。
田中角栄氏のロッキード事件や、竹下登氏のリクルート事件の真相。
ビックリしたのが「あなたとは違うんです」の福田康夫氏が辞めた意外に男前な理由などなど、今までテレビのニュース解説を見て、「へぇ~」とか「はぁ~」とか思っていた自分が馬鹿らしくなってくる。
日本が今抱える問題のほとんどは、戦後ずっとアメリカの属国であり続けたことが原因だからだ。

この本は、タイトルがタイトルなだけに難しそうに見えるが、”高校生でも読めるように”がコンセプトなので、とてもわかりやすく書かれている。
これをみんなが読んで、いわゆる常識というものがいかにいい加減で当てにならないかを実感すれば、日本は変わるかも…と思ったりもするが、マスメディアの報道があまりにいい加減すぎる。
はたしてこんな状態で選挙に突入して大丈夫なんだろうか?
by adukot_u3 | 2012-11-14 23:36 | 書籍
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