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映画『モンサントの不自然な食べもの』
日本は食の安全までアメリカに委ねることになるのか?


渋谷UPLINKにて上映中

モンサントの不自然な食べもの』というドキュメンタリーを観た。
モンサント』は日本ではあまり馴染みがないが、世界の遺伝子組み換え作物市場のシェア90%を占めるアメリカのグローバルなバイオ企業だ。
この作品は、モンサントのクリーンなイメージとは裏腹な実像を、フランスの放送局“Arte”が描いたもので、NHK『BS世界のドキュメンタリー』でも放送されている。
以下、ドキュメンタリーの内容に自分で調べたものを加えてまとめてみた。

●モンサント社とは?
以前は化学薬品会社だったが、今や農作物の種子や農業関連製品の会社にすっかりシフトしている。
扱っているのは主に、遺伝子組み換え種子〔『GM(Genetically Modified)種子』〕や、農薬、PCB、牛成長ホルモン、人口甘味料アスパルテールなどだが、様々な問題を起こしてもいる。
アメリカの「ナチュラル・ソサエティ」という有害食品や薬品の情報サイトでは、2011年度”世界で最も悪質な企業第1位”に輝いている。

過去にはベトナム戦争に使用された枯葉剤を製造していた。
⇒訴訟では和解し、メーカーの賠償責任はないという最高裁判決も出たと自社サイトで一応説明している。(日本モンサント

●『ラウンドアップ』と『GM種子』
モンサントの主力商品は『ラウンドアップ』という強力な除草剤と、それに耐性を持たせるよう遺伝子操作された種子(『GM種子』)だ。
『GM種子』は1代限り〔F1(first filial generation)〕で次の代の種が取れないようになっているので、農家は特許権を含んだ種を毎年毎年買わなくてはいけない。
でもその2つをセットで使えば、肝心の作物は枯れずに邪魔な雑草だけが枯れるから、草むしりの手間が省けて楽ですよというのがセールストーク。

パッケージには「環境に優しい」、「生分解性(微生物によって分解される性質)」という表示がされていたが、虚偽にあたるとして裁判で負けている。
結局は環境に優しくはなく、分解もされないただの強力化学除草剤ということ。

●問題になっていること
(1)健康被害
『ラウンドアップ』と『GM種子』に発がん性があることをフランス・カーン大学の研究チームが実証している。(AFP BBNews

遺伝子組み換え作物中の有害物質は、妊婦と胎児の血液中からも検出される。(mail Onkine 和訳

遺伝子組み換え牛成長ホルモン「rBGH」(商品名「ポジラック」)は、子牛を早く成長させ、乳牛の乳の量を増やすが、これを投与された牛のミルクを飲むと乳がん・大腸がんが発生しやすい。(Samuel Epstein:Arizona Center for Advanced Medicine

(2)特許侵害による損害賠償の危険性
『GM種子』には特許権があるので、『GM種子』が風に吹かれて在来種の畑に入ってしまった場合でも、農家が特許侵害で訴えられ損害賠償金を請求される。

1997年、カナダで農業を営むシュマイザーさんの所に、隣の畑からGM種子が飛んできて、品種改良したものが台無しになったうえ、モンサントにGM種子の特許権を楯に損害賠償を請求されたという事件があった。

モンサント社のサイトでは「知らないうちにタネが入り込んだという規模ではないことが裁判で認められて彼は敗訴した」と書いてある。
しかし、シュマイザーさんに請求した損害賠償と、裁判費用が却下されたことは書いていない。

その後2007年にシュマイザーさんは、第二のノーベル賞とも言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞している。(日本では1989年に「生協」、1997年に反原発の市民科学者・高木仁三郎氏が受賞している)

訴訟に至らないまでも、特許侵害の疑いのある農家には調査員をつけて監視したり、監視カメラで録画したりしてというようなことは普通にやってるらしい。(裁判で録画映像が証拠として提出されている)

(3)生態系への影響
『GM種子』と在来種が交配すると奇形な花や作物ができ、健康への影響が懸念される。
と同時に在来種が発芽しなくなり、どんどんと駆逐されていくことになる。

(4)スーパー雑草
『ラウンドアップ』と『GM種子』を使い続けた結果、それにも耐性を持つ雑草が出てきた。(日経産業新聞
大規模農地で1種類の作物だけを同じ除草剤で何年も作っていれば、そうなってもおかしくないだろうことは誰が考えたってわかることだ。
モンサントは、すぐにスーパー雑草をやっつける除草剤と、それに耐性を持つ種子を開発するだろう。
でも、そういう繰り返しで出来た作物は人が食べられるものなのだろうか?
人も、スーパー雑草のような人間だけしか生き残れないということなのか?

●海外では
【インド】
1998年、世界銀行の構造調整プログラムによりGM種子が普及。
インドの綿種子市場は事実上、モンサントの独占市場となる。
以来、モンサントに依存した高い生産コスト、思ったよりも不確実な収獲、アメリカが自国の綿花産業に多額の補助金を投入したことによる綿花価格の暴落などにより、綿花農家の借金苦による自殺が増えている。(インディー・サテライト:インド綿花生産者の自殺とモンサントの戦略

【アメリカ・カナダ】
自然に入り込んでしまったGM種子の特許侵害の裁判がたくさん起こっているが、農家には裁判費用や損害賠償は払えないので、示談という形にするケースも多い。

【イギリス】
GM作物を英国政府が輸入する際、調査にあたった遺伝子組み換え専門の研究者ブースタイ博士が「ガンを誘発する可能性がある」という否定的な実験結果を出したため、博士と研究員全員が解雇されている。

●モンサントの回転ドア
モンサント社と、規制する側の役所であるFDA(米国食品医薬品局)はズブズブ、ぐずぐずの関係。
FDAの副長官がモンサント社の元トップだったり、審査部門の担当官が元モンサントの社員だったりする。
入り口と出口が同じという意味で、”モンサントの回転ドア”と非難されている。
東電・保安院・大学・メーカーのようなことがここでも起きている。

●世界のタネ市場の現実
今や世界のタネ市場は、その大半が多国籍企業の資本下にある大手種苗会社によって支配されていて、世界のトップ3が全世界のタネの5割を支配している。

日本も例外ではない。
今、日本で売られている野菜は、ほぼ100%種のできないF1種なのだ。
もはや日本では無農薬や非遺伝子組み換えを選ぶことはできても、次の年も種をつける昔ながらの在来種はなんと、埼玉県飯能にある野口種苗にしかない。(野口勲氏・野口種苗研究所代表インタビュー
まさかこんなすごいことになってるなんて、ぜんぜん知らなかった…。

●食の安全保障
経団連の会長である米倉弘昌氏が会長を務める住友化学は、モンサントと長期的協力関係を結んでいる。(PDF:農作物保護(雑草防除)分野におけるモンサント社との長期的協力関係について
そらTPP推進するべ。

TPPに参加すれば、農業が開かれるとか輸出が増えるとか言ってる人がいるが、アメリカ以外のマーケットは非常に小さい。
そのアメリカはといえば、2010年オバマさんは横浜までわざわざ来て
こちとらこれからアジアへの輸出で儲けようと思ってんだよ。てめぇらアメリカに輸出して儲けようなんて、ゆめゆめ思うなよ
と言ってるのだ。

日本がTPPに参加すれば、安いGM作物がアメリカからどっと押し寄せるだろう。
国産の作物が価格でそれに対抗できるわけはないから、国からのツボを心得た補償がちゃんとなければ、農家はGM種子を使わざるを得なくなるだろう。
狭い日本の農地では、簡単に在来種とGM種子の自然交配ができてしまうだろうし、そうなると元に戻すことは不可能だ。

除草剤とセットでしかも1代限りの遺伝子組み換え種子が市場を席巻し、しかもTPPで関税まで撤廃してしまえば最後の砦すらなくなる日本は丸裸。
それって…日本の食自体がコントロールされるってことじゃないの?
政府は国の安全保障のみならず、食の安全保障までアメリカに委ねるつもりなのか?

と、ここまで書いてはたと気づいた。
TPPは24もの分野にわたる。
農業だけじゃなく、金融や医療などさまざまな分野で、こういうアリ地獄のような巧妙な仕掛けがされているにちがいない。
それなのに、テレビや新聞はこれでもかとTPP参加をあおる。
新聞が開戦をあおった先の大戦の時と、あまりにも似てはいないだろうか。


モンサントの他に、スイスの『シンジェンタ』、『ダウケミカル』が、GM菜種、GMトウモロコシ、GM綿の栽培を農水省に申請している。

GM技術を農産物に使うことを5年間中止しているスイスに本社を置く『シンジェンタ』は研究活動をアメリカに移しつつある。
by adukot_u3 | 2012-10-06 14:13 | 映画
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