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ドキュメンタリー『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』
映画『核の傷』自身も被曝者でありながら、軍医として被爆者治療にあたり、早くから内部・低線量被曝の危険性と核兵器廃絶を訴え続けてきた医師、肥田舜太郎さん。95歳。若い!
この肥田医師を描いた、フランス人のマーク・プティジャン監督の『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』というドキュメンタリーと、鎌仲ひとみ監督のトークショーがセットになった催しがあったので行ってきた。

鎌仲監督は、『六ヶ所村ラプソディー』や『ヒバクシャ 世界の終わりに』などの作品を撮られた方で、わたしが震災前に偶然見た『ミツバチの羽音と地球の回転』というドキュメンタリーではこのたび、映画鑑賞団体全国連絡会議監督賞を受賞されている。

今まで科学的根拠がなく、なんとも言えないとされてきた低線量被曝の被害。
でもそれは確実にあって、しかもちゃんとしたデータまであった。
単に都合が悪いから今まで隠されてきただけの話だった。
原発事故以来、遅まきながらも自分なりに情報を集め、ない頭をひねって考えて来たおぼろげなことが、この映画のお陰で多少はハッキリしたので、映画の内容+他からの情報を入れつつまとめてみた。


(1)実験開始
1945年8月6日午前8時15分、広島に原爆が投下される。
8時15分というのは、ターゲットが広島に決まってから、アメリカ軍が上空からじーっと何日も街を観察した結果、一日のうちで最もたくさんの人が外に出ているということで決めた時間だった。
その数日間、広島の人たちは、じっと空から凝視されつつ、元気に仕事をしたり勉強したりしていたのかと思うと・・・ほんとうにいたたまれない気持ちになる。

(2)傷害の調査
投下直後に、原爆傷害調査委員会(ABCC)がアメリカによって設置される。
目的はその名のとおり、原爆が人体に及ぼした傷害を調査記録するためで、治療は一切しない。
やることと言えば、被害者に日付のついたプラカードを持たせて患部の写真を撮ることと、死体を解剖して、調査のために薬に漬けて保存しておくこと。
ここでの調査結果が後々、放射線の影響度を測る尺度の「もと」となっていく。
これらの事実を眺めると、原爆は人体実験以外のなにものでもなかったことがわかる。
肥田医師は当時、ABCCが治療もするように国や軍と交渉しているが、当然却下されている。

(3)情報の隠蔽
さて次の仕事は、人体実験をしたという事実と、その被害の隠蔽だ。
マッカーサーは
「広島・長崎の原爆被害の内容については米軍の軍事機密だから、一切書いたり話したりするな。違反者は重罪に処す」
と 後々証拠が残らないように口頭で発表している。
被曝で生活が成り立たなくなった人たちには、お金で口止めし、徹底的に隠蔽した。

マンハッタン計画の副責任者ファーレルは、
「原爆では死ぬべき者はもうみんな死んでしまい、現時点では病気で苦しんでいる者は誰もいない」
という公式発表を世界中に流した。
外部被曝は認めざるを得ないが、内部被曝はないというスタンスはたぶんここからだ。

内部被曝を認めない理由は
1.核兵器を作れなくなるから
2.賠償でお金が要るから
この2点。結局はお金。

(4)研究に対する圧力
一般人に対しては情報を遮断すればいいが、研究者にはそうはいかない。
そこで、ABCCが認める以外の研究はさせないことにした。
逆らえば大学に居られなくなり、研究費も下りなくする。
だから正しくは、「低線量被曝は医学的に証明されてないから認められない」のではなく、
「実は証明されているが、日本人にバレちゃまずいから自前では研究させずに、アメリカに有利に細工したものさしを使わされていた」ということ。

日本が低線量被曝を学問的に証明するには、被曝と症例との関連性を統計学的に証明したり、ガンが放射線の影響であることを実験で証明する必要がある。
その研究自体を認められていなかった日本に、それができないのは当然だ。

(5)低線量被曝被害はある
Low-Level Radiation軍医だった肥田医師は、その臨床経験から、直接被曝していなくても症状が現れることはわかっていた。
それの原因が低線量被曝にあることを、ウェスティングハウス社の元・研究員だったスターングラス博士の著書『Low-Level Radiation(低レベル放射能)』によって知る。
博士は、原発は平時でも放射能が漏れていて、その地域の癌の発症率が高いというデータも挙げている。

ウェスティングハウス社とは、アメリカの原発製造会社で、政府の原子力潜水艦の開発計画を請け負っていた。
ウエスティングハウスに競り負け、開発費用がパーになり大損したGEのためにアメリカ政府は、GE製の沸騰水型の原子炉を、敗戦国だった日本、西ドイツ、スウェーデンに高額で押し付けた。
日本に原発が来たのは、平和利用でも環境目的でも石油危機でもなく、単なる押し付けだった。
(元公安調査庁第二部長・菅沼光弘氏)

(6)お手盛りな基準
放射線については「これ以上はNG」という国際的な基準が定められていて、それ以内には抑えられている。
しかし、この基準は25年前に作られて以来、6回改変され、そのたびに緩くなっている。

いま福島では、普通の生活を送れる基準は3.8μSv/h未満ということになっている。
鎌仲ひとみ監督が取材でイラクを訪れたとき、劣化ウラン弾が使われた地域で線量を測ったところ、なんと3.8μSv/hだったという。

いまのところ、低線量被曝地域では、ガンの発症率にさほどの上昇は見られないとされているが、
1.なんでもない場所のガンの発症率
2.ホットスポットでのガンの発症率
これを比べないと意味がないのに、1と2をごっちゃにして調査をし、発症率を薄めている。(鎌仲ひとみ監督)

(7)核兵器被害の現状
核兵器は「つくる」段階から多くの被曝者を生み出す。
原料のウラン鉱山のある国、核兵器を作る工場のある国、核兵器を落とされた国、ただ持ってるだけの国。
今でも世界中で毎日のように被爆者が生み出され、その数は世界で1000万人を超えるのが現実だ。

アメリカ最大のプルトニウム製造工場があったカリフォルニア州ハンフォードではかつて、放射性ヨウ素131を大きな風船に入れて、上空でばらまく実験まで行われていた。
「死の1マイル」と呼ばれる約1.6キロ四方では、一家全員がガンだったり、奇形児が生まれたりしていて、28家族のほとんどの女性に甲状腺障害があり、流産を経験している。
政府は実験の事実は認めたものの、微量なので影響はないとしている。
(鎌仲ひとみ監督)
どこかの国の対応とまるでおんなじだ。



映画についてはここまで。
でも、わたしの中にはまだ疑問があった。
実は、ずいぶん前に長崎大学から無料でもらえるこういう資料を取り寄せていた ↓

ドキュメンタリー『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』_f0046622_6192461.jpg●『リスク認知とリスクコミュニケーション』
●日本財団の『笹川チェルノブイリ医療協力事業を振り返って』(PDFファイル・ダウンロード可)

前者は、放射線研究者がまとめたもので「みなさん怖がりすぎ。放射線はそれほど怖くないんですよ」と言っていて、
後者は、笹川財団がチェルノブイリの事故後、ソ連に広島・長崎の医療部隊を派遣し、のべ20万人を検診した結果をまとめたもので、「住民20万人を10年以上調べましたが、亡くなる人は最初の半年で、あとはなんともないんですよ」と言っている。

いくら意見が分かれるとは言え、これはちょっとヒド過ぎると思っていたところ、長崎大学の協力機関には財団法人 放射線影響研究所というところがあって、なんとそれは元ABCCだということがわかった。やっと腑に落ちた。

そしてダメ押し。
この放射線影響研究所の前理事長であり長崎大学名誉教授の長瀧重信氏は、2011年4月14日の朝日新聞でこう書いている。
「チェルノブイリで子供の甲状腺がんが増加したが、それ以外には、セシウムで高度に汚染された地域の住民も含めて、放射線による病気の増加はまったく認められていない。
現在の最大の問題は放射線に被曝したという精神的影響(PTSD=心的外傷後ストレス障害)だ」


放射線のリスクがいかに低いかを説明するために、車やタバコのリスクと比較されたこういう資料をよく見かける。
それを見るたびにわたしは、いつも違和感を感じている。
車やタバコがいかにリスクが高くても、それは納得の上でやってること。
事故ったからと言ってトヨタを訴えるわけでもないし、肺ガンになったからと言ってJTを訴えるわけでもない。
外科手術、食品添加物、お酒、農薬、飛行機、登山、金融商品・・・それらがハイリスクであれローリスクであれ、最終的には自分の意思で選ぶ。

でも放射線は、自然界にあるものはともかく、選んだわけでもないのに原爆や原発や劣化ウラン弾とともに勝手にやって来て、空気中や海に撒き散らされる。それとこれとを並列に比べられても・・・。
ましてや、安全だと言いながら実はかなりなハイリスクなんだから、まったくお話にならない。



放射線影響研究所は、ABCCの単なる手下かと思っていたら、こんな論文を出していた。
Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950–2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases

●「これ以下なら安全」という「閾値(しきいち)」はない
●低線量被爆であっても、「被曝量と病気の発生」には比例関係がある
●福島の小学生が被爆した、20ミリシーベルトで子供がガンになる可能性は100人に2人程度と、かなり高くなる

ということを言っているらしい。

この、政府にたいそう都合の悪い論文のことは、当然ながらほとんど報道されていない。
そして、あろうことか、「厚生労働省における東日本大震災の対応状況」という紙によって、宮城県の一部と福島県の全域では患者調査を行わないという通達がされていた。
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by adukot_u3 | 2012-04-23 06:50 | 映画
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