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たんこぶ日記 その2
たんこぶ日記 その1

●世は根まわし
再び病院へ。
もうここで手術するつもりはさらさらなかった。
一人暮らしだから、親戚が近い方が何かと便利なので別の病院での手術を希望する事、ついては紹介状を頂きたい旨を伝えると、態度が豹変した。
ウチは女性の病気については専門なのに、なぜ専門病院でもないところで手術をする必要があるのだとツメ寄って来たのだ。

たしかにそうかも知れないが、私はそういう理由で病院を変えたいのではないと何度訴えても、なかなか紹介状を書こうとはしない。
最初は、病気の事を考えると専門病院の方がいいのかも知れないと思っていたが、話がこじれるにつれ、こんな病院で切られるのは死んでも嫌だと思うようになった。

それに、専門かも知れないが、この病院、やたらと出産が多い。
全摘出という事になった場合、子供が生まれておめでとう!とか言ってるそばで、痛いおなかをさすっているのはちょっと嫌だった。

困っていたところ、偶然知り合いの知り合いにその専門病院の医事課に勤めている人がいることがわかった。
世の中って狭い。
これは絶対に別の病院でやれという神様のお告げだと思い、早速その方にお願いした。
紹介状は一週間ほどで、あっけないほど簡単にとれた。

それを取りに最後に病院に行った時のこと。
医者は、いやらしいほどの笑顔で、
「そういう事情なら最初から言って下さればいいのに」
と言った。
(だから最初っから言ってるってば!あまりにステレオタイプな反応に「昼ドラかよっ」と思った)

紹介状とMRI写真をもらい診察室を出た瞬間、看護士が
「MRI写真をもう一回確認させて」
そう言うやいなや、私が持っている封筒から、勝手に私の腹部輪切りネガ写真を取り出し、天井の蛍光灯に透かしてプリントされた名前の確認を始めた。
? ? ?
そこはもう廊下であって診察室でも何でもない所だ。
傍らにはソファーに座った診察待ちの患者がたくさんいたのにだ。

「ちょっとぉ~やめてくださいよ」と言えばよかったんだろうが、あまりにとっさの事で、私はただ唖然とするしかなかった。
「こんなデリカシーのないとこでやらなくて良かった」と心底思った。

●新天地
やっともらった紹介状を持って新しい病院で診察を受ける。
新たな不安を抱いて臨む私の前に現われたのは若い女医さんだった。
意外だった。
あまりに若いので、だいじょうぶだろうか?と不安がよぎった。

でも、逆に気後れすることがない分、楽かも知れないとも思った。
それに、診察時間の最後にしてもらったせいで、待っている患者もいない。
(どうせ3人目なんだしダメもと。この際だからいろいろ聞いてみよう)
そう思った私は、思い付く事を時間を気にすることなく何でも聞いてみた。

そうしてやり取りをするうちに、私の今までの不安は不思議と払拭されていった。
まず物腰が柔らかい。
そして受け答えが落ち着いていて丁寧だった。
何よりわたしを安心させたのは、変な気を遣わなくてもいい雰囲気。

患者というのは、医者が威圧的であれば気後れするし、忙しそうにしていればあんまり煩わせるのもどうかと、意外と気を遣う。
どっちが患者かわからないようでは、病気を治すどころではない。

この医師は、答えが的確で簡潔。かと言って事務的でもなく、常に話の受け手に専念してくれた。
こうして私は、はじめて医師のリアクションに怯えることなく、自分の頭で考えることができた。
(同じ医者でもこんなに違うものなんだろうか?)
医者としての腕や経験は、多分前の病院の医者の方が上なんだろうけど・・・
(切られるのならこの人だな)
話しながら私はそう思い始めていた。

女医「筋腫核出術で大丈夫だと思いますが、絶対とは言い切れません。出血の状況によっては子宮全摘出に切り替える可能性もあります」
 「前の病院では、子宮全摘出を勧められたんですけど」と、経緯を説明。

女医「それは間違いではありません。その方が手術は簡単で出血量も少なくてすむからです。今回の場合、筋腫が大きくて数も多いので、時間がかかって出血量が多くなることも考えられます。そうなると輸血の必要性もありますし、それによる感染症の危険性も皆無ではありませんから」
 「やはり筋腫だけをとるのは大変な手術なんですね」

女医「手術する側から言うと、そういうことになりますが、それは患者さんには関係ないことです。治療に繋がる事で、患者さんが希望し、そしてそれが可能なものであるならばそれをやるのが私の仕事ですから」
 「・・・」

ここで私の腹は決まった!
この人に任せよう!と。

 「では、お願いします」
女医「わかりました。最善を尽くします。やむを得ず出血など不測の事態が起こった場合には全摘出に切り替えることにします」
 「よろしくお願いします」

しかし、この時点での私の正直な気持ちは、もうどっちでもイイや!だった。
部分でも全摘でも、もうどっちでもいいですよ。
極端かも知れないが、本当にそんな気持ちだった。

前の病院ではどうしても踏ん切りがつかなかったのに、この心境の変化はどうしたことか。
最初に手術を勧められてから1ヶ月近くを経て、少し落ち着いたこともあるだろうが、結局その時の私は、抱え切れない不安を取り除いてもらうこと。
それを渇望していたのだ。
その後、精神的に楽になった私は(治療って半分はコレなんだな)そう確信した。

●入院1日目
入院。
腎臓の検査のため、一日何もせず畜尿。
先生がチラッと顔をのぞかせる。
別段言葉は交すわけではないのに、それだけでかなり安心する。

父の入院で来れないと言っていた母も、ギリギリ間に合った。
手術はもう腹を決めたから別に不安はないが、そのための診察や剃毛、浣腸。
もう恥ずかしいことはないなと思う。

●手術
筋腫だけを取る手術で、輸血もなく無事終了。
ぼんやりした意識の中でそれを告げられて、アア良かったと思ったのもつかの間、手術室から移動するベッドの中でもどしまくり。
麻酔のアレルギー検査はしたのに、どうも麻酔に弱いらしい。。

もどすと言っても胃には何も入ってないので、胃液しか出ない。
吐き気の原因は、皮肉なことに、背中に刺しっ放しになっている痛み止めの麻酔だった。
吐き気をとるか、痛みをとるか・・・結局、麻酔を外し、座薬に切り替えることにした。

病室はナースセンター脇なので、看護士さんの献身的なケアがあり、先生も夜8時過ぎまで残っていてくれたが、結局、明け方までズーッと吐き気との戦いだった。
時間が経つのが遅い・・・。

●寝たきり
朝、ナースセンター脇の病室から移される。
ベットに寝たまま動かされるので、また気持ち悪くなる。
昨日の余波で、一日中死んだように寝ていた。

●急激な回復
朝方はまだどんよりとしていた。
明日にはお見舞いに来てくれる人もいるのに・・・。
付き添ってくれている母に、
「夕方になっても治らなかったら、明日のお見舞い断る電話して」
と言って、また寝る。

夕方、なぜか急速に回復。
夜になってちょっと元気になる。
まだ尿管は入ったままだが、これのお陰でトイレにも行くこともなく(尿意がない)、御飯は持ってきてくれるし洗いものもない。

気が向いて本を読み出すと、まったく動く必要なく本だけ読めることに感動!
トイレにすら行く必要がないなんて・・・何て楽な暮らしなんだろう。
しばらくはこの生活でもいいなと思う。
まったく、なんというものぐさなわたし。

かなり回復し、予定どおり見舞い客が来る。
頭がボサボサで、顔色も悪いので、赤いバンダナを巻いて張り切る。
そういうしゃれっ気が出てきたのが、元気な証拠だ。

向かいのベッドは、入院している病院に勤務している人なので、病院内のいろんな人が入れ替わり立ち替わり寄って行く。
おばちゃんの噂話はやはりどこも面白い。

●医長回診
回診にはたまに婦人科の医長が回ることもある。
院長回診はものものしくてイヤだけど、この先生は、穏やかでエラぶらないとても素敵な人。
大学病院の教授とかだと気後れして聞けないことでも、この先生にならじゃんじゃん聞ける雰囲気だ。
回診は私達の病室が最後なので、先生もちょっとリラックスしている。
そこを見計らって質問攻めにするのだ。

先生は迷惑な顔もせず、そのひとつひとつに実際自分が携わった事例を上げて説明してくれるので、とてもリアルで解りやすい。
回診の時には必ず
「あなたは腹黒くありませんでしたよ」
と言う。
婦人科は出血量が多く、内膜症など放って置くと、いざ手術となった際に腹部を切開すると、なかに溜まった血の海で”真っ黒”なのだそうだ。”真っ赤”ではないところがリアルで恐い。

4人部屋4人それぞれに主治医が違うので、また面白い。
なかでも私の主治医は美形なので、みんなの興味をそそるらしい。
あの先生と怪しいとか、そういうバカ話で盛り上がって大爆笑。
元気になって来た証拠だ。

爆笑とは言っても、まだまだ週刊誌をお腹に強く押し当てて、腹筋が動かないように固定して
「クックックッ…」
と笑わなくてはいけない。
笑えるぐらいに回復するのは嬉しいが、皮肉にもこの時期は、笑うことが一番苦しい。
無理やり笑わせる見舞い客には、ちょっと殺意に近いものを感じたりもする。

●シャンプー
母に頭を洗ってもらう。
美容院にあるようなシャンプー台だったので、他の人はさすがにやりにくそうだったが、こちとらプロなのでスイスイだ。この時は、母が美容師でほんとによかったと思った。
しかし、母にシャンプー台で洗ってもらうなんて何十年ぶりだろう。

シャワーも許されたので、おっかなびっくり入る。
おへその下からまっすぐ縦に10cm。
気持ちいいぐらいにスパッと切られている。
が、すでにしっかりとカサブタが出来ている。
カラダってすごい!とビビる。

すったもんだの筋腫騒動もようやく鎮静化してきた。
お見舞いに来た友達にも笑顔で対応が出来る。
ああ、健康ってありがたい。
でもしばらくすると、またそれを忘れて不摂生するにちがいないけど。

●祝!退院
退院!
病院で勉強したこと。
看護士の献身ぶりは、ほんとうに頭の下がる思いだったが、それに対してあまり気を遣い過ぎるのも良くないらしい。
「わがままを言ってもらった方が解りやすいし、ここはそういう所なんだから」
とは看護士からのメッセージ。
ありがたいと思いつつ、普通に接するのがいいということらしい。

おしまい

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PS
今回の入院で、わたしに多大なる影響を与えて下さった、2人の女性。
ネット上の方と主治医の先生。

その後、ネット上の方は、サイトに書いてあったご自身の手術をきっかけに会社を辞められ、退職金で医療短大に進学。卒業後は医療関係のお仕事をされている。
主治医の先生は数年後、有料老人ホームの施設長になられ、食の安全などに配慮した高齢者ケアーの方に進まれている。
おふた方の、人生を力まず、しかし確実に自分で切り開いていかれる様子は、見ていてスカッとする。
わたし自身はそれほどスカッとした人間ではないが、人を見る目はあったなと思う。
by adukot_u3 | 2012-03-15 21:20 | 健康・美容
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