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ドキュメンタリー『100,000年後の安全』
100,000年後の安全
100,000年後の安全』という映画を観た。
北欧・フィンランドの地下500メートルに建設中の、使用済核燃料を地下に永久貯蔵する巨大施設「オンカロ(フィンランド語で“隠れた場所”)」を取材した社会派ドキュメンタリーで、100,000年とは、放射能が無害になるまでにかかる年数を指している。

●フィンランドがオンカロを作ったのは、ロシアからのエネルギー自立のためだった
前に観た『ミツバチの羽音と地球の回転』というドキュメンタリーでは、スウェーデンがエネルギーのほとんどを自然エネルギーで賄おうとしていたのに、なぜ隣国のフィンランドが原発に3割も依存し、なおかつ、こんな巨大な貯蔵庫を作ろうとしているのか?観に行ったのは、単純にそれを知りたかったからだ。

その理由はすぐにわかった。
フィンランドはロシアの隣。今も昔もエネルギーの命綱はロシアからのパイプラインだ。
今までさんざんロシアに苛められて来たフィンランドとしては、とにかくエネルギー面で自立したかったのだ。

●100,000年後の安全を守るために、100,000年後の人たちに向けての注意書きを考え中
資源のない日本だってそういう意味ではおんなじだ。
でも、フィンランドと日本は、原発に対する真剣味がまるで違っていた。
フィンランドでは、使用済核燃料をどうするか?にあたって、あらゆる検討がされている。
太陽に向かって飛ばす、海底に埋めるなどなど。そして、その結果決まったのがオンカロの着工だ。
それがいいか悪いかは別にして、どこか他に持って行くのではなく、自前でなんとかしようとする覚悟は見上げたものだ。
そのオンカロ。満タンになるのが約100年後、それ以降は完全に封印され、100,000年の眠りにつくことになる。100,000年後までそのままかは別にして・・・。

オンカロに携わる人たちが、今、頭を悩ませているのは、100,000年後の人々にこのことをどう伝えるかだ。
地下500メートル、完成は22世紀。迷路のように緻密に設計され、万が一を考えて遮蔽扉があちこちに配置されたこの建物。100,000年後の人が偶然これを発見したら、その用意周到さから、今でいうピラミッドの宝物部屋への入り口を発見したと勘違いして、開けてしまう危険性がある。
さてどうするか・・・その時代にはもう今の文字では伝わらないかも知れないから、イラストやムンクの叫びのように、絵で視覚的に伝えるのはどうか?などなど、大の大人が大真面目に議論しているのだ。

100,000年後の人々まで巻き込むんだから、その対応は当然と言えば当然。
原発を使いながらも、放射性廃棄物の問題には正面から向き合わない日本よりははるかに誠実だ。
でも、よくよく考えたらバカみたいな話だ。今から100,000年前と言うと、ホモ・サピエンスがアフリカを出たころだ。そんな時空を超えたメッセージなんて、考えたところでいいも悪いもあるはずがない。
しかし、責任なんて持てるはずのない100,000年後の人にまで危険を背負わせないとやって行けないなんて…今の世の中は、ほんとはもう破綻してるんだな。

●日本との違いは徹底した情報公開にあり
同じ北欧で隣同士の国でありながら、片や自然エネルギーへと舵を切ったスウェーデン、片やオンカロ建設中のフィンランド。
全く違う道を行ってるように見えるが、ひとつだけ一致しているところがある。
それは徹底した情報公開。原発推進も撤廃も、彼ら自身が納得して選択した結果だということだ。

日本の原発がぐずぐずなのは、情報公開もなく、安全性の検証もきちんとされず、導入にも民意が全く反映されず、全てお上主導でやっているからだ。
誤魔化された上に、いざ事が起こったときには自己責任じゃ、納得なんてできるわけがない。

最近思うのは、世の中には、「快適な暮らしを維持するために誰かが犠牲になるのは仕方のないことで、でも、その犠牲になるのは絶対自分なんかじゃなくて、どこかの知らない誰かがなるものだ」そう、悪気なく普通に思ってる人がけっこういるんだなってこと。
そんなことをして生き延びたとしても、結局その先は、地中深くぽっかりと真っ黒で巨大な口を空けたオンカロにつながってるだけなのに。

この社会を維持するには原発しかないと言ってる人たちは、数年後に核廃棄物が劇的に処理できる方法でも見つかると思ってるんだろうか?
まさかヤマトが、イスカンダルに放射能除去装置を取りに行ってくれると思っているわけじゃないだろうが、汚染水の処理ですら往生してるというのに、急にそんなものなんてできるわけがない。
百歩譲って、今、原発なしでは国民を食べさせて行けないから、過渡的なエネルギーとして使うなら話はわかる。
でも、次世代エネルギーへの投資もしてないし、成果が上がってる風でもない。
そういう人たちは、自分達の世代が良ければいいと思ってるか、なんにも考えてないかのどちらかだ。
やはりこの道を進む限り、人類は滅亡へ向かうしかないのかと思うと、やり切れない気持ちでいっぱいだ。

それは原発や放射能被害に対してではなく、こんなに高度な社会を築けるような人間という生物が、自らの生命のリスクマネージメントすらできないアホだったということに、心底ガッカリするという意味でだ。
有名なホーキング博士が、地球と同じかそれより進んだ星から生物がなぜやって来ないかという質問に、「やって来る前に、自ら生態系のバランスを崩して滅んでしまうから」と言っていたらしいが、ほんとにそうかも知れないと思う。

こんなことを書くと、厭世的になっていると思われるかも知れないが、そうではない。
わたしは、ただ真実が知りたいのだ。そしてスウェーデンやフィンランドのように自分で選択したいのだ。
それはそんなに難しいことなのだろうか。

※2011年7月25日、田中康夫氏(新党日本代表)、河野太郎氏(自由民主党)、柿沢未途氏(みんなの党)の3代議士の企画で、国会で上映会が開催されていた。

マイケル・マドセン監督のインタビューも興味深い

(原子力発電環境整備機構のリポート(PDF

画像入りで紹介されていて、わたしのより何倍もわかりやすいサイト
by adukot_u3 | 2011-07-14 01:31 | 映画
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