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書籍『ドキュメント 女子割礼』内海夏子
NHKが主催する「日本賞」という教育番組の国際コンクールがある。ショッキングなルポルタージュ風だったり、ほのぼのとしたアニメでありながら含蓄があったりと表現方法はさまざまだが、世界各国の「教育」に対するお国柄が垣間見えて、とても興味深いプログラムだ。

数年前の休日、わたしは、つけっぱなしのTVからながれる、ある番組を観て固まった。
それは『ワリス・ディリ- タブーに挑むスーパーモデル』。日本賞で東京都知事賞を受賞したということでたまたま放映されていたらしいが、ワリス・ディリーという人がモデル界でなんか新しいことをする話だろうと思ってなにげに見ていたら・・・そこにはタイトルからは想像もつかない事実が語られていた。

女子割礼・・・それはもう言葉ではいい表せない衝撃だった。
そんな恐ろしいことが、現代においてなお行われていることに、戦慄すら覚えた。
普段、よそさまの国の慣習を、こちらの感覚でもって一概に否定するのはどうかと思ってはいるが、それはもう、そんな眠たいことを言ってはいられないほど、どう理屈をこねても理解しがたいものだった。
「これはイカン!今すぐにでもなんとかしなくては!」
そんな、とんでもない衝撃を受けたにもかかわらず、人間とはよくできたもので、しばらくすると忘れた。

女子割礼それから数年後、古本屋をふらふらしていたときに見つけてしまったのだこの本を。
あのときの衝撃がフラッシュバックした。
こ、これはきっと・・・読めということだな。
そう主って半ば使命感にも似た気持ちで読んでみた。

たぶん、わたしの眉間のシワは、この本によって相当深くなったに違いない。
特に、最初の50ページを読むのは本当につらい。
女子割礼とは・・・早い話、女性器のほとんどをザックリと切り取り、尿と経血が出る部分を残してあとは縫ってしまうことを言う。それも麻酔ナシで。
うすうすはわかっていたものの、それが具体的にどういうふうに行われるのかの説明の途中では、とうとう読むのを一時中断してしまった。
あまりにもひどいのと、あまりにも理不尽で、腹が立ったからだ。

女子割礼は、男子のそれと同じように宗教的なものなのだという説があるらしい。
そう言われてしまうとなかなか反論できないのがツラいところだが、よくよく読んでみると、結局その目的というのは、女性の性欲をなくして浮気をさせないためという、単純な理由でしかないように私には思えた。
割礼することで性欲がなくなるという単純さに、男性目線が透けても見える。

でも、目的がどうであれ、割礼をしないと一人前の女性として認められないし、結婚もできないし、村八分になってしまう。
だから女性は、死ぬほど痛くて、時には死んでしまうこともあるような慣習を、代々受け継いでいる。
本当は死ぬほど嫌なことなのに。
死なないまでも、生活は不自由で、心的外傷も深刻なものがあるという。

なんとかできないだろうかと思うが、これを当事者ではない国々が強制的に止めさせるのは、越えてはいけない境界線を越えることになると、廃絶運動のリーダーは言う。
強制的に廃絶したところでそれは闇に潜って続けられるか、割礼していない女性をコミュニティの中で一層弱い立場へと追いやるだけだと。

たしかにそのとおり。
一刻も早く女子割礼を廃絶したいとは思うが、それによって当の彼女たちの地位がより低くなっては本末転倒だ。
ここは冷静になって、ワリス・ディリーのように勇気があって社会的にも影響力のある女性に、他の女性の意識を引っ張ってもらいながら、除々に女性が自立できる環境を整える。
そうやって地道に変えて行くしかないのだ。

Desert Flowerワリス・ディリーがついに映画になりました。
Desert Flower(デザート・フラワー)
by adukot_u3 | 2006-08-22 10:33 | 書籍
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