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宝塚歌劇 『誰がために鐘は鳴る』
 原作ヘミングウェイ、ゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマン主演の映画でも知られる名作『誰がために鐘は鳴る』は、スペインの内乱に義勇兵として赴いたアメリカの大学講師ロバート・ジョーダンが、マリアという女性に恋をし、戦場という緊迫した状況の中で二人が愛を育んで行く四日間という短い時間を描いた作品。
かつて鳳蘭・遥くららのコンビで上演され好評を博している。(鳳蘭さんと遥くららさん稽古場ご訪問ショット。遥さんの顔小さすぎ!)

宝塚歌劇 『誰がために鐘は鳴る』_f0046622_14555689.jpg それが今回は、「宝塚の至宝(と勝手に呼んでいる)」宝塚歌劇団専属の脚本・演出家の柴田侑宏先生の脚本に、これも宝塚の若手、木村信司先生の新演出での32年ぶりの再演ということで楽しみに出かけた。

 ・・・いやいや、素晴らしい出来でございました。まずはやはり脚本がいい!流れがスムーズなので、引っかかるとことが全くない。これがイマイチだと「ここでそうなるかぁ?」とか「ここでそれを言う?」とかハテナマーク飛びまくりで、どうも芝居に入り込めなかったりするが、あの短い時間、それも戦場という場所でふたりが恋に落ち、急速に惹かれ合う様子がいとも自然に描かれている。さすがは柴田先生だ。

 また、主役のふたりの演技も、名作と言われる脚本を十二分に表現し、文句のつけどころがない。男役トップの大空祐飛さんは、颯爽としていて正義感溢れるいかにも大学講師らしかったし、彼女が持ついい意味での影の部分がまた、その後の運命をも暗示しているかのようで、ピタリとハマっていた。
 娘役トップの野々すみ花さんは、まっすぐでひたむきで強く、そしてなにより可愛らしい。戦場というジャングルに咲いた、真っ白い一輪の花のような感じ。



 ひとつ気になったことと言えば、ラブシーン。あれ?柴田先生のラブシーンってこんな甘々だっけ?と思ったが、今回の演出は木村先生だったということを思い出しナットク!木村先生のラブシーンは、ちょっと恥ずかしくなるぐらい甘い(とわたしは思っている)。
 「ボクのうさぎちゃん」とかいうセリフが、オリジナルからあったとはとても思えないし、あのおなじみの「階段座り後ろから抱きしめパターン」も健在だった。そんな甘々なちょっと盛った感じのラブシーンだが、西野カナのようなストレートな表現が好きな今の若者にはちょうどいいのかも知れない。

 野々すみ花さん演じるマリアは、両親を敵のファシスト軍に殺され、おまけに自らも蹂躙された過去を持つ。ロバートを愛するがゆえ、ドン引きされることを覚悟の上で、それをあえて告げるあたりが清々しくもあるが、逆に痛々しくもある。告げずには愛を受け入れることすらできないということは、彼女がいかにそのことで苦しんで来たかの裏返しでもあるからだ。もちろんロバートは「そんなことは忘れてしまいなさい」と優しく抱きしめるが、こんなことを告白されて、うろたえずにそれができる男が果たしているのか?これぞ宝塚歌劇の真骨頂だ。

 穢れた(と思っていた)自分を受け入れてくれたロバートに全てを委ね、身も心も深く結ばれるふたり。しかし、そんなふたりの行く手には暗雲が・・・。負傷し、みんなの足手まといになると思ったロバートは、自ら犠牲になる道を選ぶ。
 引き離され泣き叫ぶマリア。「生木を裂く」とは良く言ったものだ。その様子があまりにもリアルなので、不覚にもウルウルしてしまった。わたしは周りに知っている人がいると、どうしても意識して抑えてしまうので、この日は滅多にないことに自分でもビックリした。

 大空さんは童顔だが、実はけっこう遅咲きのトップさん。二番手のころには何度か見ているが、本当に立派になったな~としみじみ感じ入った。若いけれど達者な野々さんとの息がまたピッタリだ。
 そうそう、野々さんはマリアを演じるにあたって、髪を短くカットしている。役柄を考え、大空さんに相談した上でのことだそうだ。宝塚の娘役は、お姫様から町娘まで、それこそ色んな役柄を演じなくてはいけないので、地毛を短くすることはまずない。ましてや野々さんは娘役トップだ。ショートヘアーのトップ娘役は、今までもあまり聞いたことがない。それぐらい役に入れ込んでいるということだろう。

 当時の映画の撮影秘話を読むと、マリア役のイングリッド・バーグマンが撮影のために髪を短くし、映画のヒットと共にマリア・カットも大流行したとある。そのあたりのことも野々さんの女優魂に火をつけたかな?大空さんもストイックなほど役に入りこむタイプの人らしいので、そういう面でも二人は息が合うのだろう。

 不思議なもので、トップコンビの仲が良くなかったり、息が合わないというのはすぐわかる。コンビの場面が多い宝塚の場合は特にだ。トップコンビがふたりとも演技が良くて容姿も良く、醸し出すカラーも合って息も合うというのは、そうそうあることじゃない。このコンビなら、あと数作は見てみたいと思うが、ただ、遅咲きゆえにあと何作見れるのかが心配なところだ。
 最近はちょっとご無沙汰だった宝塚観劇だが、これを機に復活してみようか。そんな充実した内容だった。
ちなみに、わたしは現在誰のファンでもない。
by adukot_u3 | 2011-01-10 14:55 | 演劇・演芸
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