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オレンジ色の電車
 知らない間に、JR中央線のオレンジ色の電車がなくなっていた。東京に出て来て初めて住んだのが中央線沿線だったので、あのオレンジ色の電車がなくなってしまうのは、やはり寂しい気がする。

 さだまさしさんの歌に『檸檬』というのがある。

♪食べかけの檸檬、聖橋(ひじりばし)から放る
♪快速電車の赤い色がそれとすれ違う~

♪食べかけの夢を聖橋から放る
♪各駅停車の檸檬色がそれを噛みくだく


 聖橋とは、JR御茶ノ水駅のすぐそばにある石造りの橋のこと。すれ違う赤い電車とはたぶん、中央線のことだろう。このフレーズを聴くと、見たこともないのに、あの高い橋の上から投げられた檸檬と中央線のオレンジ色が、コマ送りを交えたスローモーションで交錯していく光景が浮かぶ。

 その昔、さださんがラジオで、「インタビューだかの仕事で御茶ノ水駅近くに行ったとき、ふと現場のテーブルを見ると、小さな白い皿に檸檬がひとつだけ置かれていて、その心遣いにいたく感激した」というようなことを言っていた。それを聞いたときわたしは、「この檸檬を置いた人とは友達になれる」なんとなくそんな気がした。

 聖橋を渡りきった所に、元の昌平坂学問所、今の湯島聖堂がある。たくさんの人が行き交う街なのに、この中国テイストただよう聖堂に行くと、意外に人影はまばら。周りの喧騒から隔絶されたような場所から、対岸のお茶の水駅を眺めていると、ひっきりなしに行き来しているオレンジや黄色の電車がいっそう慌しく見える。

 時を置かず黄色い電車も、ステンレス車両に変わって行くのだろうと思ったら、もうとっくになくなっていた。聖橋と中央線を見るたびに、檸檬を思い出していたわたしも、そのうちに思い出さなくなるのだろう。
by adukot_u3 | 2010-10-20 01:44 | 日々雑感
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