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百楽荘
 以前、母を連れて行った百楽荘が、エキサイトブログの『旅とお散歩』で紹介されていた。
自分の知っているところがこうやって紹介されると、自分まで誉められたようで嬉しい。

 わたしは小学校に上がるまで、この旅館の近くの港町で母とふたりで暮らしていた。
美容院をやっていた母は、ここの旅館での結婚式の着付けをしによく行っていた。このブログではこじんまりとしたと書いてあるが、当時は松の巨木の並木を抜けて行く、堂々たる老舗旅館だった。加賀屋と比べれば、それこそどこもこじんまりだが。

 母が仕事をしている昼間、わたしは近所のお宅に預けられていた。
と言うと、ちょっと不憫な感じがするが、ありがたいことに、家の人にも近所の人たちにも、とても可愛がってもらった記憶しかない。
夏休みになると、近所のお姉ちゃんやお兄ちゃんたちの後ろについて、虫捕りや海水浴にもよく連れてってもらった。

 泳ぎに行くときには、こっそり秘密の通路を通って山越えをする。
途中にポツンポツンとある畑にゴロゴロしている西瓜やトマトをちょこっとご馳走になりながら、背丈よりも高い草をかき分けかき分け崖を滑って行くという危ないルートだ。
今なら学校がうるさくて絶対に通れないだろうが、これがスリル満点で超楽しいのだ。

 西瓜やトマトをご馳走になると言ったが、それはもう出荷が済んで畑の隅に置き去りにされた、売り物にならない半分黄色い西瓜や、おそろしく育ち過ぎたおばけのようなトマトで、そのまま置いておいても腐るだけのものなので、あしからず。

 井上陽水の歌に『少年時代』というのがあるが、あの歌のイントロを聴くといつも、そのときの木々の隙間から射す眩しい夏の日差しと、みんなでこっそり食べた温かい西瓜とトマト、見上げんばかりに育った草がざわざわと揺れる音とその草いきれがフラッシュバックする。
西瓜やトマトはもちろん冷やした方がウマイに決まっているが、ジリジリと日差しが照りつける今頃になると、あの温かく不恰好な西瓜とトマトが無性に食べたくなる。

百楽荘
by adukot_u3 | 2010-08-07 22:35 | 能登半島
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