いつでも人がコミコミの渋谷から、井の頭線でたった2駅の「駒場東大前」という駅から徒歩10分。閑静な住宅街の大きな公園のなかにこの建物は建っている。大木が多く茂るここは、公園とは言っても小さな森のようで、ひっそりと落ち着いた、とても雰囲気のいいところだ。
ベンチに座って風に吹かれていると、「こういう場所なら、高いお金を払ってでも住みたいと思う気持ちも、わからなくはないな」高級住宅街というものに、あんまり興味のないわたしでさえ、そう思ってしまうほどだ。
廊下には赤じゅうたんが敷かれ、床は寄せ木細工のようなモザイク模様、窓にはステンドグラス。大理石がふんだんに使われていて、当時の豪華さがうかがえるどころか、今でも十分すぎるほど豪華だ。家具類は一切置いてないので、部屋はガラーンとしているが、ここにかつて公爵一族が住んでいたと思うと、パーティーやアフタヌーンティー・・・見た事も聞いたこともない公爵家の暮らしぶりが勝手に浮かんで来て楽しい。
一緒に行った友達と二階のソファーで休憩していると、最近調べてもらったわたしの実父の戸籍の話になり、
「ねぇねぇ、急にこのお屋敷の相続権があることがわかったらどうする?」
「え~っ・・・・どうしよう~(;^_^A」
と、そんなおバカなことを真剣に考えたりして・・・。
久々にほのぼのとしたひとときだった。
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旧前田公爵邸】
旧加賀百万石前田家の第16代当主、前田利為氏の本邸として、また、外国人の迎賓館として、昭和4年に欧州建築の粋を集めて建築された。当時は東洋一の邸宅と言われていたらしい。
戦後、アメリカ極東軍司令官の官邸として接収され、一部改修された後、昭和39年に東京都の所有となった。現在は、土日祝日のみ無料で一般公開されている。