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帰郷します
このたび、田舎の実家に戻ることになりました。
先々の仕事のこと、ひとり暮らしの母のこと、放射能のこと、フクシマのことなど、諸々を考えてのことです。
考えたところで仕事がなくては暮らしては行けません。
タイミング良くそれが見つかったことが背中を押してくれました。

思えば30年前、わたしの意思よりも、とにかく実家を継ぐことを強要する親に反発して、コネで入れてもらった親戚が経営する会社を3カ月半で辞め、ひとり東京に出て来たのでした。
勢いだけで飛び出したものの全くアテはなく、特急に揺られながら、わたしはこの先どうなってしまうんだろうと不安に押しつぶされそうになったのを昨日のことのように思い出します。

でも、今と違って景気が良かったことが幸いしました。
初めての不動産屋で怖い思いをしながらなんとか住まいを見つけ、雑居ビルの2階にある小さなデザイン事務所に就職し、手持ちのお金がカツカツだったので、会社に来る信用金庫の営業マンに頼み込んで、信用金庫からなんとか20万円を借りました。
外では色々お金がかかるので、家ではもっぱら嵩の多いキャベツ中心の食生活。
親とは電話すらしない決裂状態・・・。
わたしの東京物語はこうして始まりました。

あれから30年・・・(きみまろかっ)
泣いたり笑ったり怒ったり、尖ったり丸くなったり、いろーーーーーーんなことがあって今に至ります。
なんだか外国に長期留学していたような、そんなワープ感もあります。

東京に出てよかったと思うことは、いろんなモノを見て、いろんな人と出会い、いろんな経験ができたこと、偏食と乗り物酔いが治ったこと、人見知りが緩和されたことです。
わたしは、知らない人と交わることや自分が変化することに尻込みする内弁慶で臆病な子供でした。
そんな性質は逆に、東京という街で生活するには好都合なサンプルだったのかも知れません。

元々の性質なので、今でも社交的なわけではないですが、今は、知らないものを遠ざけたり、変化を受け入れないということはありません。
むしろ、それを自分の塩梅で楽しもうとします。
なので、歴代の自分の中では今の自分が一番好きです。
30年かかりましたが、そう思えるようになったということは、わたしの東京物語も、まんざら捨てたものではなかったということでしょう。

東京という所は、しんどいこともあるし生活するにはお金もかかるけれど、とても知的好奇心を刺激されるエキサイティングな街です。
震災以降、批判めいたことを書くことが多くなってしまいましたが、わたしはやはり東京という街が好きだなぁとあらためて思います。

今までは人に会うのも簡単でしたから、そんなに頻繁に会わなくても「みんなこの空の下で元気でやっているんだろうなぁ」と思えましたが、これからはこの空が「あの空」になってしまうのかと思うと、とても寂しいです。

本当は東京物語の締めくくりとして、大好きな(まだ行ったことないけど)ポルトガルに行ってしばらくゆっくりと考えて、帰国してから動き出そうと思っていました。
前々から、ポルトガルのリスボンでファドを聴きながら呑んだくれつつ事切れるという甚だ迷惑な最期を夢見ていたので、意外に早く仕事が決まったのは、事切れるにはまだ少々早いという神様のお達しでしょうか。

ポルトガルはしばらくお預けになってしまいましたが、ファドを聴きながら野垂れ死ぬ夢を胸に、東京で習得した変化を楽しむ術でもって、新しい自分、新しい能登物語をわたし流に編集していこうと思っています。
by adukot_u3 | 2013-04-05 23:46 | 日々雑感
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