人気ブログランキング | 話題のタグを見る
映画『聴こえてる、ふりをしただけ』
守ってくれる人が誰もいなくなった日、わたしは大人になることにした



聴こえてる、ふりをしただけ』は、事故で急にお母さんを亡くした11歳の少女・サチと、その後の日常を描いた作品。
状況は全く違うけれど、わたしも気づいた時には父がいなかったので、なんとなく気になって観てみたくなった。

おんなじだなぁと思ったのは、周りの適当さ。
「お母さんはさっちゃんのこと見守ってくれてるよ」
と言う先生は、
「じゃぁどうして告げ口なんていじわるされるんですか」
というサチに、返す言葉がない。

それと、学校や世の中が、揺れ動く自分の気持ちとは関係なくどんどん普通に流れて行くこと。

整理のつかない気持ちを抱えたままの自分と、学校での普通の自分とを使い分けることは、子供にはけっこうしんどい。
でも、自分だけ立ち止まっているわけにはいかない。
サチがやたらに泣かないことにも、ものすごくリアリティを感じた。

サチは、おばけを怖がる転校生が来たことで、
「人は死んだらどうなるんだろう?」
と考えるようになる。

亡くなったお母さんは生き返らない。
人が死んだらどうなるか?も、誰にもわからない。
そんな中でサチは、お母さんの形見の指輪を首にかけつつ、周りの人との関わりの中で次第に自分なりに折り合いをつけてゆく。

「守ってくれる人が誰もいなくなった日、わたしは大人になることにした」
というコピーは、まさにそのとおり。
自分にはおおごとであっても他人にはヒトゴト。
気遣いのある人や無い人に揉まれつつ頭をぐるぐる回転させながら、出口はなんとか自分で見つける。
とても気の毒で酷なことではあるけれど、それしか方法はない。

あぁ、小学生の時ってこうだったかもなぁ。
そんなふうに自分を思い返す映画だった。

監督は精神科の看護師で、2人の子供のお母さんでもある今泉かおりさん。
26歳で上京し、映画専門学校に入って映画づくりを学んで育児休暇中に映画を撮ったということで、いったいどんなにバイタリティ溢れる人なんだろう?と思ったら、こんな普通の人だった。(WebD!CE

この作品は、第62回ベルリン国際映画祭で『子ども審査員特別賞』を受賞している。
『子ども審査員特別賞』とは、11歳から14歳の11人の子どもの審査員によって選ばれるというユニークな賞だ。
日本の11歳の少女の機微は、ベルリンの子供たちにも伝わるものなんだな。
by adukot_u3 | 2012-10-11 04:07 | 映画
<< どんな人が書いたのが会ってみた... 高野豆腐の鶏挽肉づめ >>