久々に鎌倉に行ってきた。
目的は因幡晃(いなば・あきら)さんのライブ。
いつかはナマ歌が聴きたいと昔から思いつつ、あっという間に数十年。鎌倉の小さなギャラリーでライブをするという情報を偶然ネットで見つけたので早速行ってきた。
日曜日の北鎌倉の駅を降りてビックリ!!
ひとつしかない改札に、人、人、人。
そこにまた電車がやってきて、ホームはさながら朝のラッシュアワーのようになっていた。
リュックをしょって真新しいスニーカーをはいた、リタイヤ組とおぼしきグループの多いこと多いこと。
ま、鎌倉にお金が落ちるんだからいいかと思っていたら、地元の方曰く、そういう人たちはお弁当持参であまりお金を使わず、お寺見て散策して帰るのだそうだ。
なんと!
北鎌倉なんて路地ばっかりだから、散策と言ったって人さまの庭先にお邪魔するようなものなのに。
そんなお騒がせなことをしといて、そこで何も食べず何も買わずに帰るとは。
子持ちの若い夫婦ならともかく、貯金があって年金もらってて、暇もあって健康なくせに・・・。
わたしが住人だったら殺意を抱くところだが、古くからお住まいの奥様はさすがに鷹揚でいらした。
そんなこんなで人の多さに辟易しつつ向かった
高級洋菓子店・歐林洞(おうりんどう)。
外観、内装、インテリア、紅茶、洋菓子、接客、どれをとっても高級感あふれる、いかにも鎌倉マダム御用達風な素敵なところだ。
季節柄、入り口のあじさいがいい感じに彩りを添えていた。
そこの2F、グランドピアノが置かれただけの100人も入れば一杯になるスペースで聴く因幡さんのナマ声は、あの人混みでのイライラを一気に解消してくれた。
繊細だと思っていた声は、意外にも太く、その声量にビックリする。
でもって当然ながらチョー歌がうまい。
いや「歌がうまい」という単純な感覚を超越している。
言ってみれば・・・劇場。
そう、歌を歌っている間、そこの空間が劇場になる感じだ。
歌がうまいということは、こういうことなんだなぁと、しみじみ聴き入った。
亡くなった三波春夫さんがシベリアでの抑留生活のおり、地獄のような日々の中で、彼が歌う歌が抑留兵や現地のロシア人たちの心を慰めたという話を聞いたことがあるが、そういう声を持った人はやはり、それを人に聴かせることを仕事とするのが自然の摂理にかなっているんだなとあらためて納得した。
因幡さんは相変わらずサングラスだったが、歌の雰囲気とは違って、意外にもちょっとおちゃらけた面白いおっちゃんだった。
前の方の席の熱烈なファンのおばさま方が、うなづきながらめちゃめちゃ熱心に話しを聴いているのが微笑ましかった。
ファンはたくさんいるに越したことはないが、屋台骨はだいたい、こういうコアなファンによって支えられている。
「まぁまぁ好き」というファンがたくさんいるよりも、「すごーく好き」というファンが一定数いるアーティストの方が長持ちするのは、人間関係と一緒だ。
残念だったのは、かつて東海テレビの昼メロ『夫が戻る日』(笑)の主題歌にもなった、わたしの大好きな曲『夕映えを待ちながら』が聴けなかったことぐらいか。
ライブに向かう途中、時間があったので、レアなお寺『
長寿寺』にちょこっとだけ寄った。
ここは数年前まで公開されてなくて、今でも春季(4、5、6月)と秋季(10、11、12月第1週迄)の金・土・日の10時~15時、それも晴れた日にしか公開されない。
さらに、撮影目的で拝観する人をブロックするために、一眼レフはNGで、コンパクトカメラならOKという規則まであるので、人もまばらでいい感じ。
よく手入れされたお庭が非常に心地よい。
混み混みの円覚寺とか建長寺とかより全然オススメ。
本堂
観音堂。
苔がふっくら、もふもふしている。
手入れの行き届いたお庭。
秋にもぜひ来てみたい。