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『イントゥ・ザ・ワイルド』
イントゥ・ザ・ワイルドの写真遅ればせながら、ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』を観た。

 7歳の知能しか持たないサムを演じた『アイ・アム・サム』、娘を殺害される元犯罪者を演じた『ミスティック・リバー』、この、とても同一人物とは思えない演技を見てからというもの、ショーン・ペンという俳優がとても気になっていた。
 関係ないが『アイ・アム・サム』では、成長し、お父さんより賢くなってしまった娘のルーシーちゃんが、さりげなくサムに気を遣うところがなんとも泣かせる(T_T)

 マドンナの元夫で、パパラッチに暴行したりと、なにかと騒動を起こし、ハリウッドでもクセものだと思われていた彼も、再婚し子供ができてからは、ちょっと落ち着いたようだ。そんなショーン・ペン監督の最新作が、アラスカを舞台にしたこの『イントゥ・ザ・ワイルド』だ。

 どういうわけか、大の寒がりなのに、アラスカとかシベリアとか、北の荒涼とした大地に妙に惹かれてしまうわたし。実際に行きたいとは思わないが、そこを舞台にしたものだとつい観てしまう癖がある。公式サイトのトップページにある、廃車になったバスの上で遠くを見つめる主人公を見たとき、なぜか「これはぜひ観に行かなくては」と思った。

 『イントゥ・ザ・ワイルド』は、登山家でありジャーナリストのジョン・クラカワーのノンフィクション『荒野へ』が原作となっている。
裕福な家庭に育った青年が優秀な成績で大学を卒業し、大学院へ進む直前、車を捨てお金を燃やし、ひとり南部の農場で働くようになる。アラスカに行く資金作りのためだ。そこでは、いろんなふれあいがあり、アラスカ行きを引き止める人たちにも出会う。しかし今度は全てを捨て、自由を求めていよいよアラスカへ放浪の旅に出るが・・・というお話だ。
ありがちな、自分探しの旅に出て成長して帰って来るような話かと思うだろうが、どっこい、この映画の結末は、そう甘くはない。

 アラスカの自然は驚くほどに美しい。しかし、そこでの生活は想像を超える厳しさだ。
痛々しいほどの純粋さで、その厳しい大自然と格闘しつつ生きる青年。それを見ているうちに、自由とは?理想とは?孤独とは?家族とは?恋愛とは?お金とは?生きるとは・・・?そんな?マークがいくついくつも飛び交い、深く深く考えさせられていく。
こんな映画があるんだ・・・・・・。
観終わったあと、あまりのショックにしばらく茫然としていた。「バッカみたい」と言う人もいるだろうが、わたしはなぜかこの青年のように、生きて行くためのバランス感覚の悪い人に、非常に共感してしまう。
共感するしないは、理屈じゃないから。

 ショーン・ペン監督は、この映画化権の獲得に10年近くを費やし、自ら脚本も手がけている。10年もかけるなんて、かなり思い入れがあったのだろうが、この映画の素敵なところは、その思い入れのわりに力みがなく、極めて淡々と描いているところだ。逆に淡々としているからこそ、ありのままの真実を直視せざるを得ないという厳しさもある。

 この映画、内容もさることながら、アラスカの大自然が超素晴らしい。DVDで観る機会があったら、なるべく大きくキレイに映る画面がオススメ。

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD] | 商品情報(商品)
by adukot_u3 | 2009-03-26 14:38 | 映画
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